なぜか秋になると思いだし、読んでいる本、吉本ばなな「吹上奇譚」シリーズ。
第一話、第二話の感想はコチラ↓
yamayamaring.hatenablog.jp
今回も、秋の終わりにピッタリな、切なく悲しく甘く愛しい、読書体験をいただきました。
ホラー小説なんだけど、ホラー要素はちょっぴりで、私の中では哲学ファンタジーです。
フィクションなんだけど、今の生き方をみつめなおさせるような、ハッとする言葉が多く出てくるのがこのシリーズの特徴かなと思います。
今回も記録しておきたい言葉がたくさん。
以下具体的な内容には触れていませんが、軽くネタバレになるかもしれません。
・自分は鼻歌を歌いながらしているようなことが、人を救う。なんてすばらしい、最高だ。
・人と話すって、悪くないですね。自分たちのしていた仕事の良さが今、初めて本当にわかりました。人というものは、人に聞いてもらうことで、自分を見つけるんですね。
・世界中のあらゆるところに、ここまではっきりとではなくても歴史が刻まれている。教科書に載ったらたった一行くらいになってしまうが、それに翻弄されて生きたり死んだりした人たちがたくさんいる。今現在はその力の中心はお金に置き換えられ、バーチャルなものに変わりつつあるが、かつては力=国土だったのだから。
★1・世界には多様な考えがあり正解はないとしたら、できることは自分のモラルとそれに沿った生に感謝して生き抜くだけだなと
・そのまま生きていてほしい、それだけでいい。(中略)そして彼女の人生が少しずつ変わっていくかもしれない。そこに期待は全くせず、特に彼女を好きとさえ思わず、当然のようにただいることだけが肝心だ。(中略)こういうのを愛っていうんだろうと思う。つかず離れず優しくもせず心もこめず、ただここにいる。
・おまけの人生だと思うと、すごく安心するのよ、私。(中略)今日をどう過ごしても、おまけの中の感覚だから、自由だなって思う。
・ 家も自分の体も時間も、みんななにかから借りてるんだよ。だから、それをありがたいなとだけ思ってもらっといて、今、目の前にあることじゃないことを考え過ぎなければ、人って変なことにはならないんじゃないかな。
★2・時間を超えて安らぎが届くといい。それはありうることだと思った。時間はただ流れているものではなく、つながったり前後がずれたり変わったり、無数のあり方があるように思う。
引用元:吹上奇譚 第三話 ざしきわらし | 株式会社 幻冬舎
特に★1と2は最も強く刺さった文章。
★1:多様な価値観にあふれていて、誰かの価値観にも社会の価値観にも正解が見いだせず、かといって自分の価値観なんてこの年になっても全然わからない私は、「自分のモラルとそれに沿った生に感謝」これがズドンと落ちてきましたね。
モラルっていうのも考えだすと難しいんだけど、なんか本能的に「それはしたらアカンやろ」って思う瞬間、それに従って生きることは実は苦しくなく一番楽に生きられるかもしれないと思います。
あと「それはしたらアカンやろ」って逃げ出せる環境があることにも感謝ですね…日本以外じゃそれすらままならないことを最近の世界のニュースを見ているととても感じます。
★2:これはもう「大豆田とわ子と3人の元夫」にドハマりしていた人なら共感しまくると思いますが、私はかなりハマっていたのでぶるっと震えました。
時間というのは一方向に流れているわけじゃなくって、あの笑っていた瞬間の過去の出来事は今でも存在しているし、あの時つらかった自分や誰かを今からでも抱きしめに行くことができると思うんですよね。泣きそう。
ちょうど友達とのLINEで小学校の時の先生の話から自分の小学校時代の苦痛だったことの話になったんですけど、「ほんとにいやだったね、つらかったね」って自分を抱きしめにいきたくなってしまいました。大人になって子供の頃の自分を振り返って癒す療法があるけど、こんな気持ちかなって思いました。