いっぽいっぽ日記

いっぽいっぽ日記

日々シンプルに心地よく過ごすために、やってみたこと、思ったこと。

ダメな野心を手放し、健全な野心を持とう。今の時代にこそ読みたい 林真理子「野心のすすめ」

「野心」というとなんだかガツガツした一昔前のニオイ…
そう思っていた私に、「なにをいってるのあなた、ちゃんと自分と向き合っていないからそんなことが言えるのよ。かっこわるい」って頭をはたかれたような一冊でした。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

野心のすすめ (講談社現代新書) [ 林 真理子 ]
価格:990円(税込、送料無料) (2021/9/24時点)


まず本編に入る前の「はじめに」の一説からして心をつかまれます。

たとえば、受験はわかりやすい例だと思います。
最近の親御さんは、自分が偏差値教育で苦労した成果、息子や娘に「あなたが無理せず行ける学校でいいよ」ということが多いそうです。でも結局、第一志望には落ちて、第二志望、第三志望の学校に進むのはよくあることでしょう。であれば、第一志望のハードルを上げてみる。まずはできるだけ高く跳ぼうと努力しながら、結果的に目標の少し下をがっちり手に入れようとすることだって立派な野心だと思います。

目からうろこです。「野心」といえば、常に一流を目指して何が何でもそれが欲しいと「分不相応」なものを目指して突き進む、どちらかといえばあまりよくないイメージを持っていたけど、「分不相応」である一番高い山目指してがむしゃらに走り続けることで、もともと到達したかった峠を楽に超える能力が身につく…
「健全な野心」ってつまりこういうことか、と納得しました。

本編には、野心が車の前輪だとすると、努力は後輪であり、両方のバランスがうまく取れて前に進んでいくことこそ「健全な野心」であると書かれています。

長年の不景気と閉塞感、多様化していく社会にあってこうした「野心」という言葉はどこか遠い世界の話、私の生活とは無縁の話として片づけてしまいがち。
でも今の時代を生きる若い人ほど読んでほしい内容でした。常に自分が何を望みどのような状態に満足するのか早い段階で知っているということ、その状態を何が何でも手に入れるという強く健全な心を持ち続けるということは、むしろみんながギラついていた(であろうバブルの時代。私も知らないけれど…)時よりいっそう重要になっています。
もちろん私みたいなアラフォーでも「健全な野心」は必要、この先の安定がもはや風前の灯火であることを自覚し、適切な野心を持ちシビアに自分と未来を見ていかなければ…と背筋の伸びる思いでした。
個人的にも最近見ないようにしていた部分…現状に甘んじていて努力を怠っていることや、同級生たちの順風満帆(にみえる)な活躍と比較して卑屈になること、自分のやりたいことがいまだにはっきりとわからないままずるずると過ごしていることについて、はっきりと「あまい」と指摘してもらえたこと、今読むべくして読んだ本だなと感じます。


林真理子さんの本は最近まで読んだことがなかったのですが、読みやすく面白く、またご本人がとてもチャーミングで素敵だと思いました。林真理子さんの本は友人から進められて読み始めましたが、年上のお姉さんに私の知らない世界を語ってもらっているみたいな読書体験が新鮮で、本当に感謝です。
メンタルが弱くてのらくらしている私は林真理子さんのようなタイプの方と面と向かって接することが怖くてできないと思いますが、そんな私にもぴしゃっと愛情をもってもの申してもらえる、本って、読書ってこれだから素晴らしいと思います。